関西ジャニーズと関西方言

こんにちは!

別件でGoogleフォームを使っていて思い出したので、去年とったアンケート結果を公表したいと思います。

レポートにしたものをブログに書き起こすので長い&読みにくいです!!!あと関西について知ったかぶりしてそれっぽいことを書いているところがあるので、これは違うんじゃないか??っていうところがあったら教えてください…

 

とにかく長いので暇つぶしにでも適当に読み流してください。

ではいきます!

 

 

①はじめに

 昨年度(2019年度)の研究では「関西ジャニーズの特徴には方言がかかわっているのではないか」という仮説をもとにアンケートを実施しました。

わたしは関西に自担がいたことがなく、あくまでイメージでしか語れませんが、関西ジャニーズは関西全体でのし上がっていこうという意識が強いイメージがあります。

とはいえイメージだけで話すのは申し訳ないので、「『関西ジャニーズ』そのものに愛着はあるか」という質問をしてみました。

すると「ある」「どちらかといえばある」という回答が100%だったことから、オタクも関西ジャニーズを一つのまとまりとして捉えている、と判断しました。

 

また、関西ジャニーズのイメージとして「面白い」「家族みたい」を選んだ人、

関西ジャニーズの関西方言に『萌える』ことがあると答えた人も多く、

オタクの側はタレントの一つの特徴として話し方を重視していることがわかりました。

 

 これはジャニーズに限りませんが、関西、とくに大阪では「相手を笑わせよう」「楽しませよう」という意識を持って言葉を用いている人が多い印象があります。

関西出身だけどそんなことはない、と思う人も当然いるとは思いますが、一応「大阪ことば学」という文献で同じようなことが指摘されているので、そういう傾向が強い、くらいに捉えてもらえればと。

そしてこの印象は、「面白い」というイメージを持たれることが多く、バラエティ力が高いとされる関西ジャニーズの意識の源流になっているのではないかと考えました。

 

 以上をふまえて、昨年の研究では、関西ジャニーズが東京に拠点を移しても「コテコテ」の関西方言で話すという特徴を「意識的なものかどうかわからない」と結論づけました。

しかし、やはり関西弁は一種の「キャラクター性」を担うものであり、意識的に用いているのではないかと考えるようになったので、

今回は関西ジャニーズが用いる関西方言のファン側の捉え方とタレント側の意識を比較しながら、彼らが用いる関西方言は意識的なものなのかどうかを考えたいと思います。

 

 

②アンケートについて

 まずは、関西ジャニーズと方言の関わりについて、いくつかの設問を用意し、アンケートを実施することにしました。

アンケートで見えてくるものは、あくまで「ファン側の捉え方」と「ファン目線で捉えたタレント側の意識」ですが、それを分析することでタレント側の意識そのものについても考察することもできると考えました。

アンケートの概要は以下の通り

 

実施期間:2021年1月26日~29日

回答数:76

有効回答数:74(全く同じ答えが3件あったため、うち2件を合計から除くこととした)

Googleフォームにて作成したアンケートに対し、InstagramTwitterを通して回答を呼びかけた。ジャニーズのファンアカウントを用いたため、74人のうち69人の回答者が「ジャニーズを好きだ(好きになったことがある)」と答えている

・数に偏りがあるため、ジャニーズファンの回答者とジャニーズファン以外の回答者の比較はしないものとする

 

 

③ファン側の認識(アンケート結果と考察)

【設問1】

関西ジャニーズに「自担」(好きなジャニーズタレントを意味するファン用語)もしくはそれに準ずるタレントはいますか(いましたか)。いる場合は名前を教えてください。

(結果)

「いない」と答えた人が28人で36%でした。

回答者の好きなタレントをグループごとに分けて集計すると以下の通りになります。

なお、複数回答可としたため、好きなタレントの合計と回答者数の合計は一致しません。

関ジャニ∞…4人

ジャニーズWEST…7人

なにわ男子…28人

Aぇ! group…8人

Lil かんさい…4人

ジャニーズJr.(グループ所属なし)…5人

永瀬廉(King&Prince)…3人

向井康二…1人

回答を呼びかけたのがジャニーズJr.ファンとしてのアカウントであること、回答者の範囲がTwitterのフォロワーのフォロワー程度であることから、「デビュー組」=デビューしている関西ジャニーズ(下線を付した二つのグループを指す)のファンの回答があまり得られませんでした。

「デビュー組」のメンバーの名前を挙げた回答者は、多くの場合ジャニーズJr.の名前を同時に挙げており、「掛け持ち」をしている状態であるため、ほとんどがジャニーズJr.のファンだといえます。

これが回答に影響する可能性を考慮して考察します。

 

【設問2】

タレントの関西方言に「萌えた」ことがあれば、どういうところか教えてください。

(結果)

昨年度の調査でも同じ質問をしましたが、関西ジャニーズの中に「自担」がいない人でも、何かしらの例を挙げている人がいたので、ジャニーズファンにとって関西方言に「萌える」ことは一般的なことだと考えられます。

 

・意識していない瞬間に出る関西方言が好き(素が出ている感じがする)

・特定の言葉や語尾に萌える

・自分の話す言葉と違うので面白い

 

大きく分けるとこの三種類が多かったです。

その他には「関西ジャニーズ同士の細かい関西弁の違いで出身地の違いを感じたとき」「胸キュン台詞は通常だとくすぐったい気持ちになるが、関西弁だと親近感も加わってよりリアル感が増す」「キャラ(顔)とのギャップがある」という意見が見られました。

自分の話す言葉と同じだから好き、違うから好き、どちらもあるのが面白いな~と思います。

ちなみにわたしは斗亜ちゃんの「Lil miracle」のイントネーションがめちゃくちゃ好きでYouTubeでそこだけ見たりする(?)

細かくて伝わらない好きな言い方選手権とかしたいな…

 

 

【設問3】

関西ジャニーズは意識的に関西方言を話していると思いますか。

また、その理由があれば教えてください。

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(結果)

【思う】と答えた理由

・出身地よりも濃い関西弁を使っているように感じるから(東京での番組出演時に一般人がイメージする関西人を演じているように思うことがある)。

・決め台詞などで関西方言を混ぜることが多いから。

・東京との差別化を図る意識があると思うから。

・関西方言も関西ジャニーズの魅力の一つで武器になるから。

 

【思わない】と答えた理由

・自然に出ているように思えるから(イントネーション等が自然だから)。

・生まれたときから関西方言なので関西方言で話すことは普通だと思うから。

 

【どちらともいえない】と答えた理由

関ジャニ∞村上信五が意識的に話していると言っていたから。

・人によって違うと思うから(上京しているか否かによっても違う)。

・無意識なものでもあると思うが、「関西ジャニーズ」であることが強みでありキャラクターだから。

・決め台詞を関西方言で言うときには意識していると思う。

・関西ジャニーズであることを売りにしているアイドルは関西方言も売りにしている印象があるが、関西ジャニーズだけのグループは売りにしているとは感じない。

・周りが話しているから自分もその方言を使う頻度が高まるという仕組みがありそうな気がしているが、それを意識的としていいのか判断がつかないから。

 

(考察)

 この質問に関しては、「意識的」という言葉をどう捉えたかによって回答に多少の違いが出たかな、という感じでした。

回答者に、多くの場合上京せず関西地方に在住したまま活動を行っている関西ジャニーズJr.のファンが多いため、「思わない」が増えてしまった可能性があるのは否定できません。

 

「思わない」と答えた人は関西方言をあくまで自然に出てくるものだと捉えていました。

「Island TV」では、大抵の場合、企画があることを前提に収録に臨むテレビやYouTubeよりも自然な姿が見られますが、そういった媒体においても関西方言を話していることなどがそういった捉え方に繋がるのではないかと思います。

 

「思う」の理由として多かったのが、関西ジャニーズであるという誇りを持っているから、関東との差別化を図る武器になるから、というように、関西ジャニーズであることと関西方言を話すことを結びつけているものです。

「思う」と答えた人のうち「関西ジャニーズの関西方言がわざとらしい」と感じている人は意外と少なく、むしろ関西ジャニーズというブランドを意識している=意識的に関西方言を話していると考えている人が多いように見受けられました。

 

 「どちらともいえない」の理由として、「決め台詞を言うとき」「テレビ番組に出たとき」に意識的に使っていると感じたというものがありました。

自然体ではなく、関西方言を使用することで自身にキャラクター性を持たせようとする心理が働いている場合に、意識的に関西方言を使う(と捉えるファンがいる)というのは興味深いことだと思います。

また、意識的に関西方言を使っているように感じる関西ジャニーズの特性として「関東のグループの中で関西ジャニーズであることを売りにしているアイドル」「親近感を与える役割を持っている人」などを挙げた人もいました。

個人名として関ジャニ∞村上信五の名前がいくつか挙がりましたが、これはテレビ番組『月曜からよふかし』で、村上信五が意識的に関西方言を使用しているのではないかという趣旨のやりとりが頻繁に行われるからだと推察できます。

 

 タレント側も、常に意識して関西方言を用いているわけではないとしても、テレビ出演や決め台詞を言う場面など、より強いキャラクター性が自分にあったほうが有利な場合、関西方言の程度が強まる傾向にあります。

これによってわかるのは、関西方言がタレントにとって個性になり得る、ということです。当然では?と言われそうですが…

 

 

【設問4】

関西ジャニーズが関東でグループを結成し、関西方言を話さなくなったら寂しい、悲しいといったネガティブな感情を持ちますか。/逆に、関東でグループを結成しても関西方言のままだと嬉しいと思いますか。/その理由を教えてください。

 

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【持つ(どちらかといえば持つ)/思う(どちらかといえば思う)】と答えた理由

・関西(原点、育った場所、過去)を忘れずにいてくれる気がするから。関西にいた頃を思い出せるから。

・実際に東京でデビューして関西方言を使わなくなったアイドルに対し、恩を忘れたのかと腹が立ったから。方言が消えると関西ジャニーズだった過去をなかったことにされた感じがするから。

・関東のグループにいても良いアクセントになるから。

・関西方言が好きだから。

・関西方言を話すのもタレントを好きな理由だから。方言はその人のアイデンティティ・個性だから。

 

【どちらかといえば持つ/思わない(どちらかといえば思わない)】

・関西方言でなくなることは寂しいが、時の流れだと割り切れる。逆にいつまでも関西方言を使っていると「あざとい」感じがするから標準語にシフトするのも仕方ない。

・自身も西日本から東京の大学に進学し、方言が抜けたから。周りの人に影響されるのは仕方ないから。

・関西にこだわりがないから。

 

【持たない(どちらかといえば持たない)/どちらかといえば思う】

・染まりきらないでほしい。

・他のメンバーが標準語である中で一人が関西弁だと一種の武器になると考えるが、本人がグループに溶け込んでいくうちに影響され、標準語になってもそれはそれで良い。

・方言もキャラ・個性だから。

 

【持たない(どちらかといえば持たない)/思う(どちらかといえば思う)】

・方言を使う使わないの判断は本人に委ねられる。その判断への自分の感情はフラットだと思う。

・どちらでもいい。特にこだわりはない。

 

(考察)

 関西ジャニーズには関東でデビューしても関西方言のままでいてほしいと思っていることがけっこう多い。

特に、関西方言を使わなくなるとネガティブな感情を持つ/関西方言のままだと嬉しいと思うと答えた人が「関西を忘れていない感じがする」という理由を書いている割合が高かったです。

原点、育った場所、故郷、過去など「関西ジャニーズ」に対して様々な言い回しが見られたのが面白かったです。

これは普段Twitterを見たりオタクと話したりしていても頻出する言葉かなと思います。

 

また、関西方言を使わなくなることを「恩を忘れた」「(東京に)染まった」「魂を売った」と表現した人もいるなど、関西方言を使用しなくなると、関西ジャニーズだった過去を忘れられたように感じる人もいました。

これが批判材料として使われているのをたまに見かけるので、やっぱりそういう心理があるんだなーという感じ。

 

逆にいえば、関西方言を使用することで関西ジャニーズを忘れていない、大切にしているといったアピールにも繋がるといえます。

 関西方言を話さなくなることは寂しいが、逆にこだわり続けていてあざとい感じがするという意見もあって、ファンはあくまで東京に行っても「自然と」関西方言を使用していることを重視している場合が多かったです。

また、関西ジャニーズに「自担」がいない人が関西方言を使うかどうかにこだわっている割合は比較的低かったです。これはわたしも例に漏れずあんまりこだわりはないので、そんなもんかな。

あと、個人的な話ですが、最近大阪芸人にハマっていて、YouTubeのコメントとかを見ていると「東京に進出しても大阪を忘れないでほしい」っていうのをよく見かけます。

だから、関西圏の人が関西弁を話さなくなるのが寂しいっていうのはわりと一般的な心理だと思うんですが、面白いのは関東圏のオタクも自担が関西弁を話さなくなったら寂しいと思っていたりするところ。

自担の好きなところの一部が変わってしまう感覚なのかなと思うけどどうなんだろう。

 

 

【設問5】

関西出身ではないジャニーズでも、関西ジャニーズに所属したら関西方言を話すべきだ(話してほしい)と思いますか

 

(結果・考察)

これについては、「どちらかといえば思う」10%以外の人は「思わない」「どちらかといえば思わない」のどちらかを選んでいました。

特に「思わない」が過半数を占めており、ファンは後天的に関西方言を獲得してほしいわけではなく、あくまで自然に感じられる関西方言を重視していることがわかりました。

これは【設問4】で理由として挙げられていた「関西方言にこだわり続けているのもあざとい感じがする」という意見とも結びつきます。

 

 

【設問6】

「王道アイドル」(「キラキラした」「アイドルらしい」と形容されるアイドル)が関西方言を話すことはギャップになり得ると思いますか。

(結果)

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【設問7】

関西ジャニーズの「関西らしさ」とは、どういったイメージを指すと思いますか。/そのイメージが維持されてほしいと思いますか。

(結果)

・家族感、グループの垣根をこえて仲が良い、縦のつながりが強い

・笑いに貪欲、積極的、ハングリー精神、泥臭い、雑草魂

トークが面白い、盛り上げ上手、会話のテンポが良い

・親しみやすい、明るい、はつらつ

・狡猾

・うるさい、やんちゃ

 

(考察)

 この設問では、昨年度選択肢を設置する形で聞いた質問とほぼ同じ趣旨のことを自由回答に変更して尋ねました。

「家族感」「明るい」「面白い」「貪欲」に関連した言葉が多く挙がりました。

 比較的ポジティブな言葉が用いられている場合が多いですが、「面白さを強制される雰囲気」「狡猾で関西のイメージを悪くしている」「面白さを関西ジャニーズに求めるのはイメージの押し付けで違うような気がする」といった意見も少数ながら見られました。

貪欲さ、ハングリー精神は東京に対抗する気持ちから生まれるものだと考えている人もいました。

 ネガティブなイメージを抱いている人もいるものの、多くは関西ジャニーズとしての特色をそのまま維持してほしいと考えていました。

 また、【設問6】で「王道アイドル」が関西方言を話すことはギャップになると考えている人が多かったことから、「関西」のイメージと「王道アイドル」のイメージは重ならないのではないかと考えられます。

 

 

④タレント側の意識(アンケート結果と先行研究をふまえて)

 【設問1】【設問2】からは、ジャニーズのファンにとって関西方言がタレントを好きな理由として数えられたり、「萌える」要素であったりすることがわかりました。

また、【設問3】では、あくまでも「自然な」関西方言を求めているファンが多く、ジャニーズが関西方言を意識して用いているのはキャラクター性を強めることが有利にはたらく場面(テレビ出演の際や決め台詞を言うときなど)であると考えられています。

また、【設問4】では、関東でデビューしたアイドルが関西方言を使わなくなることで関西ジャニーズだったころを忘れたと捉えられてしまうことがあるとわかりました。

 

Kakin(2019)の論文において「ファンは、アイドルの成長を応援する活動に参加することで、育てる感覚を持ち、 その「未熟さ」を磨く過程そのものを楽しむのである。」と述べられていますが、こうした「育てる感覚」を重視するファンには、タレントにも育った過程を覚えていることを要求します。

(これ、レポートで真面目に書いたんですけど、どこかの研究者に「未熟さ」を磨く過程そのものを楽しむ~とか書かれてるのだいぶしんどくないですか???中学生のオタクを2年くらいやっているので余計にそう思うのかもしれない…育ててる感覚あるし…)

しかし、タレント側がそれを覚えているかどうか、大切に思っているかどうかを客観的に判断することは難しい。

その点、方言は「自然と出てくるもの」と捉える人が多く、自分の耳で確認することも簡単にできるため「育った過程を忘れていない証拠」として使われやすいのだと考えられます。

 

 こういったファンの考えを、タレント側はある程度わかっていて、その上で意識的に関西方言を使っているタレントも少なくないと思います。

その根拠として、元は関西ジャニーズであったが、関東でデビューしたアイドルを挙げておきます。

King&Princeの永瀬廉さんとSnow Man向井康二さんは東京を拠点に活動しており、他のメンバーが関西方言を話さないにもかかわらず、グループの中で唯一関西方言を話します(言われなくても知ってるよという感じだと思いますが念のため)。

アンケートにおいても二人の名前が挙がっており、その多くが好意的な意見でした。

 

 上林(2020)の論文では、「対者が他地域出身者であれば東京語形を、同じ地域出身であれば方言形のうち当該方言らしさがより現れた伝統方言形を用いることで、「その場面らしさ」を最大限に体現しようとする運用の在り方が移住者にはあるものと考えられる。」と述べられており、

一般的に方言は標準語話者の中にいると弱まっていくものです。

その傾向が表れていない時点で、タレントには関西方言を弱めないように話そうという意識がはたらいていることは明らかなのです。

 

反対に、関西ジャニーズの中にいるときや関西方言話者のタレントと話しているときに関西方言が強まる傾向にあるのは自然なことであるため、

グループのメンバーが関西方言話者のみで構成されている場合、必ずしも意識的に用いているわけではないとも考えられます。

 

 川口(2019)の論文では、関西出身の筆者が、大学進学の際に東北へ行ったことをきっかけに、「関西人という他者化されたまなざしを受け、かつ自らもそれを内面化させて振る舞うようになる」と述べられています。

東北に行く前は「東京との対比の上での大阪などという意識はなかったし、私自身そもそも関西人として東京や他所を見ていたのではない。私は地理的には関西の、大阪の、柏原という場所に生まれて住んでいたにすぎない。私はまだ「関西人ではなかった」」といい、東北に長年住み続けてもなお関西方言を話すことについて「そうして考えてみると、私は別にものすごく関西のことを愛しているわけでも、関西に帰りたいと切望しているわけでも、あるいは関西弁をしゃべろうと強く決意しているわけでもないこと、また逆に、東北が好きではないとか、東北に染まりたくないなどと思っているわけでもない」と分析します。

ざっくり言うと、関西圏以外の場所に行ってからのほうが「自分は関西人だ」という意識が強くなったという話。

 

 つまり、タレント側はおそらく、ファンの中で「関西を忘れてほしくない」という意識があることをわかっていて関西方言を使用しており、関西方言を話すことと関西を大切にすることはイコールで結びつかないのです。

(だからといって彼らが「関西を大切にしていない」と主張したいわけではないし、むしろ大切にしているこそなのかなと思います)

関東を拠点に活動することでより強く「関西人」として見られるために、自らをキャラクター化して演じるために関西方言を用いているのでしょう。

「他者化されたまなざし」によって関西人としての振る舞いが内面化するならば、人前に立つ仕事をしている関西ジャニーズのタレントは皆、ある程度意識して自らの中に「関西人」を存在させているのだと考えることもできます。

よって、完全に無意識で関西方言を用いている可能性は著しく低く、自らのキャラクター性を関西方言によって成り立たせているのです。

 

しかし【設問5】からもわかるように、そういったキャラクター性は後天的に獲得することはほぼ不可能であり、関西方言は関西出身者にのみ与えられた「武器」であると捉えることもできます。

関西ジャニーズは、その「武器」を用いて、程度の差はあるにせよ「意識的に」ファンに対して自分のキャラクターをアピールしているのです。

 

 また、最近では【設問6】で尋ねたような「関西方言を話す王道アイドル」という路線のグループ「なにわ男子」「Lil かんさい」といった関西ジャニーズJr.のユニットが誕生し、人気を勝ち得ています。

これは、今まで関西ジャニーズが築いてきた【設問7】の答えにあるような関西ジャニーズのイメージの上に成り立つ、関西ジャニーズだけが使うことのできるギャップ戦略です。

そのギャップ戦略によって、従来の関西ジャニーズ路線を踏襲した「Aぇ! group」の「関西らしい関西ジャニーズ」というアイデンティティが目立ち、同時に人気を得るという相乗効果もあります。

これは東京ジャニーズJr.を上回る勢いで関西ジャニーズJr.の躍進が著しい要因の一つだろうと考えます。

グループごとに活動しているというイメージの東京ジャニーズとは異なり、関西ジャニーズはグループ同士の交流によってもファンを獲得しています。

 その中で、関西方言はあくまで「自然に」見える形で使用されることで、関西ジャニーズに内在化された「武器」として、彼らの活躍を後押ししているのです。

 

 

⑤おわりに

 ファンは関西方言を関西ジャニーズのアイデンティティとして捉えており、あくまでも自然に関西方言を話す姿に魅力を感じている場合が多く見られました。

しかし、タレント側はその視線を受けて、ある程度意識的に関西方言を使用し、またそれを自らのキャラクター性として内在させることで、さらなる人気獲得を目指しているのです。

あとは単純に東京との差別化を図っているんだろうし、関西ジャニーズと東京ジャニーズが絡んだときに話し方が違うだけでなんか良い…とMステ円盤を見て思いました。

「意識的」「無意識的」の境目をどこに設定するかというのも難しい問題ではあるので、人によって捉え方は変わってくると思いますが、個人的に戦略的なアイドルがめちゃくちゃ好きなので意識的に関西方言を強めていたらわたしはときめく…(聞かれてない)

 

なんかうまくまとまってませんが、こんな感じで終わりにします!

アンケートに協力してくださった方、ありがとうございました!

 

 

【参考文献】

尾上圭介『大阪ことば学』1999年/創元社

KAKIN,Oksana「「未熟さ」を磨き、愛でる―ファン行動に見るアイドル育成の文化的側面」『人間文化創成科学論叢』21,223-230,2019

上林葵「関西若年層のカジュアル談話にみるスタイル切換え : 首都圏移住者を例に」『阪大日本語研究』阪大日本語研究 (32), 37-61, 2020/02、大阪大学大学院文学研究科日本語学講座

川口幸大「東北の関西人:自己/他者認識についてのオートエスノグラフィ」『文化人類学』84(2), 153-171, 2019

 

新見直子、丸目裕「話し手の印象に及ぼす方言と参加者の出身地の影響」『対人コミュニケーション研究(3)』 19-32, 2015-03

小池保「『地域言語』の潜在的可能性」『尚美学園大学学術情報研究』(19),1-25,2011/03/01

町一誠ほか「話し手の方言仕様と印象:コードスイッチの適切さと聞き手の出身地による影響」『社会心理学研究』(21),173-186,2006

 

 

 

おまけ

 

【設問4】の答え一覧(担当も記載)

関西ジャニーズが関東でグループを結成し、関西方言を話さなくなったら寂しい、悲しいといったネガティブな感情を持ちますか/逆に、関東でグループを結成しても関西方言のままだと嬉しいと思いますか

【持つ/思う】

・原点を忘れずにいてくれる気がするから(永瀬)

・関西人らしさを残そうとしてくれているから(関西に担当無し)

・関西ジャニーズは関東ジャニーズに比べて自身の住んでいる地域を重要視する傾向にあるように感じるから(恭平)

・自分が方言がないから関西弁にあこがれがある(関西に担当無し)

・自らが育った場所のことを忘れていないで欲しいから(恭平)

・親近感が湧く。逆に標準語では距離を感じる。(大西流星

・故郷とか過去のことを無かったことにしてない気がするから(恭平)

・関西にいた頃を思い出せるから(長尾)

・向井くんがそうだけど、そこまで浮いている感じはしないし逆に良いアクセントになっていると思うから。平野くん、永瀬くんがほぼ標準語なのは少し悲しい(関西に担当無し)

・しょうれんが東京に行って標準語に染まってたときすげえ萎えたし恩忘れたのかと思って腹立ったけど、康二が今でもSnowManで関西弁使ってくれてるのはまじであああ康二だ〜すきいい〜ってなる(西畑)

・関西弁が好きだから(濱田、藤原、長尾、向井)

・関西の心を忘れてないんだなと思うから(関西に担当無し)

・私自身は、標準語を話しても良いと思うのですが、関西出身ジャニーズが頻繁に標準語を話すと、"関西を捨てた"という風潮が世間で持たれ、彼たちが名前も知らないような人たちに責められていくのが悲しいので、関西弁のままだったら嬉しいなと思います。(末澤)

・私自身は関東の人間だけれど、好きになったのは関西弁を話す道枝くんなので、いつになってもそのままでいてほしいと思うから。(道枝)

・関西出身であることを隠していない感じがする(安田、永瀬、長尾、福本)

・関西出身というアイデンティティを感じるため(恭平)

・関西で育ってきたことを忘れさせてくれないことがうれしいから。(重岡、末澤、福本)

・方言が消えると関ジュだったということを無かったことにされている気がするから。(いる)

・関西出身タレントの関西弁は変わらないおばあちゃん家のごはんのようなものだから(長尾)

・関西弁で話しているイメージを持っている人が変わると違和感を感じる(恭平、大西流星

・地元を大事にしている印象をもつ(濱田)

・あー魂売ったな!と思ってしまうから(恭平)

向井康二くんがその一人ですが関東県出身のメンバーが大阪弁をしゃべってる(真似してる)時萌えます…(安田、西畑、恭平、…)

・関西を忘れてしまったんだなと思いたくない(福本)

【持つ/どちらかと言えば思う】

・関西にいたこと、まだ関西に意識があることが伝わると嬉しいから。(重岡、正門、福本)

・関西弁が可愛いから(丸岡、風雅)

【どちらかと言えば持つ/思う】

・関西は関西の魅力があるから。関西の子が関東に来て、方言を直したところで人気に関係ないから。永瀬廉がそのひとり(恭平)

・関西で活動していたことを忘れていないんだなと思うから。(西畑)

・自然と関西弁が薄れていくのは仕方がないことだけど、意図的に標準語にされると違和感を覚える(道枝)

・関西弁は遺伝子レベルで組み込まてて欲しいから(大橋)

・関西ジャニーズの彼を好きになった場合、関西を忘れていないと感じるから。(大西風雅)

・なんか寂しくなります(関西に担当無し)

・それを個性にして欲しい(斗亜)

・単純に関西弁が好きだからです。「私にはないもの」なので、憧れます。(桐山、道枝)

・関東に行って関西弁を話さなくなったら関西で活動していたことを否定されているように感じるから。(長尾)

【どちらかといえば持つ/どちらかといえば思う】

・周りが標準語の中で1人方言だとなんとなく可愛い。レア感。

・方言はその人のアイデンティティの一つだと思うから(関西に担当無し)

・取り繕わず、自然体でいてくれている感じがするから(関西に担当無し)

・地元、故郷の言葉を大事にしてくれてる気がするから。自分自身も関西出身で、関西弁の方が親近感が湧くから。(ジャニーズに詳しくない)

・関西弁が好きだから(ジャニーズWEST

・関西弁であることも好きである理由の一つになっていると思うので、話さなくなったら少し寂しいと感じそうだから。(西畑)

・今もこれからも彼らが関西弁を話すのは当たり前のことであって欲しいから。(道枝、永瀬、上垣)

・すごくデリケートな話になるが、個人の感想として、向井康二くんが関西弁を話し続けているのは嬉しいが、永瀬廉くんが話し続けているのは、うっすらモヤモヤした感情が残る。関西に住んでいた期間の違い、関ジュとして活動していた期間の違い等 関西弁が身についてる程度に差があるからなのかもしれないが、はっきりとした理由は自分でもわからない。また、関西で活動していたことを大事にしている=関西弁を話す という公式が成立するかと言われればそうでもないと思うし、メンバーが標準語を話していたらそっちに釣られるのは自然な流れだと思う。実際に私も九州から関西に上京して約3年だが、九州の言葉はほとんど話さず、ガチガチに関西弁を話すようになった。(浦)

・かわいいので(関西に担当無し)

・関西弁など方言はその子を象徴する個性だと思うから(関西に担当無し)

・関西弁が好きだから(大西流星

・関西の人らしさを感じられるから。(関西に担当無し)

・特にない(ジャニーズに詳しくない)

・わざと方言を使っているわけではないと思うから(関西に担当無し)

・故郷を忘れたように感じる。(関西に担当無し)

・関ジュとして過ごしたことをないがしろにしてない感じがして嬉しいから。(室龍太

・関西弁が好きなので嬉しい(関西に担当無し)

・元々話してた関西弁だと落ち着く(大橋、小柴)

・関西で頑張っていた時代や自分たちが応援していた時の懐かしさみたいなものがあると思うから、なくなったら染ってしまったようで寂しい(大西流星

・たまに出るとキュンとしますね(関西に担当無し)

【どちらかといえば持つ/どちらかといえば思わない】

・関西弁でなくなってしまうことは寂しいけれど時の流れだと割り切れるので。 いつまでも関西弁を使っていると「あざとい」感じもするから次第に標準語にシフトするのも仕方ないと思う。その点永瀬廉はあざとさを感じさせないのですごいなと思う。

・本人が必要ないと思うならそれでいい(佐野)

【どちらかといえば持つ/思わない】

・自身も西日本から東京の大学に上京して、方言が抜けたから

【どちらかと言えば持たない/どちらかといえば思わない】

・関西弁にこだわりがないから(関西に担当無し)

・周りの人の影響を受けるのは仕方がないから。(関西に担当無し)

・関東の人間なので、関西弁でなくなっても違和感はない(関西に担当無し)

・へえ~と思います 担当がいれば違うのかもしれない(関西に担当無し)

【どちらかといえば持たない/どちらかといえば思う】

・染まりきらないで欲しい(いる)

・親近感、近くのかっこいいお兄さん、彼らの考えているであろう国民の応援団、というテーマに属しているから(福本)

【持たない/どちらかといえば思わない】

・自然に出てくる方の言葉を話してくれればいいと思う。(関西に担当無し)

・どこに行っても方言を使う使わないの判断は本人に委ねられるので、その判断への自分の感情はフラットだと思うから。(関西に担当無し)

【持たない/どちらかといえば思う】

・個性があって面白い(関西に担当無し)

・他のメンバーが標準語である中、関西ジャニーズ出身のタレント1人が関西弁だと目立ちますし一種の武器になると考えためです。しかし、本人がグループに溶け込んでいくうちに影響され、標準語になってもそれはそれで良いと思います。(恭平)

関西との繋がりが残っているのだと思えるから(例:永瀬廉)。(関西に担当無し)

・方言も愛嬌のひとつだと思うから。(関西に担当無し)

・方言もまた一つのキャラだから(関西に担当無し)

【持たない/思わない】

・どっちでもいいと思っています。特にこだわりはないです。(西畑)